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エイベックス 新社屋のすべて

concept

プロジェクト担当者が語る。
イノベーションが起きる
オフィスの条件

エンタテインメント業界に新しい働き方を提案すべく誕生したエイベックスの新社屋は、従来のオフィスにはなかった数々の新しい仕組みを導入しています。フリーアドレス制の執務フロアやコワーキングスペースに始まり、レッスンスタジオやレコーディングスタジオも設置、さらにはIoTの積極活用等、その多岐にわたる工夫について、社屋移転のキーマン二人に話を聞きました。

村山智之 エイベックス株式会社 グループ管理本部 総務グループ
ゼネラルマネージャー

加藤信介 エイベックス株式会社 グループ執行役員 
グループ戦略室長

本社移転の1年前に
設計プランを見直した理由。

エイベックスのグループ管理本部の村山智之は、新社屋の基本設計からプロジェクトに関わってきた人物です。設計プランが決まったのは4年前のこと。
「当時は港区で建築物の高さ規制が始まる直前でした。そこでこれが最後のチャンスだからと、100m超えのビルを目指すことが決まっていました。しかしそれ以外は、島型の執務フロアで構成される一般的なオフィスの予定で設計を進めていました。それが、当初の移転予定時期まで1年を切っていた昨年11月に大幅な変更をすることになったので、社屋移転の担当者としては、『マジで!?』と感じたのが正直なところです」
 設計プランを完成予定の1年前に急遽変更するという異例の事態。エイベックスのグループ執行役員の加藤信介は、経緯をこう説明します。
「私は当時社長室に所属していて、松浦社長と一緒に社内の構造改革に取り組んでいました。ある程度構造改革のフレームが見えてきたとき、『会社が生まれ変わろうとしている今、新社屋の設計は本当にこれでいいのか?』というMadでPureな疑問が社長から投げかけられました(笑)。それをきっかけに、新しいエイベックスの方針やこれからのエンタテインメント業界における理想の働き方と、当初の設計プランを照らし合わせて検討した結果、大幅な見直しを決定。あわせて、このプロジェクトに私も参画することになりました」
エイベックスを、今まで以上にイノベーションを生み出す会社に変えたい。そのために欠かせないと考えたのは、社内外の積極的なコラボレーションを促すことでした。しかし従来の島型オフィスでは、せっかくいろいろな才能を持った社員が同じオフィスにいるのに、社内のコミュニケーションが縦割りで固定化されてしまい、「隣の部署の人が何をやっているかも分からない」という状況に陥りやすいという課題がありました。

加藤 信介

「この状況を変えるには、社員同士が自然に混ざり合うようなオフィスにしなければならない。そこで国内外の事例を調査し、社長とともにいくつかのオフィスを視察した結果、執務フロアにはデスクを固定しない『フリーアドレス制』を導入することを決めました」(加藤)
 さらに見直しは執務フロアにとどまらず、社屋全体に及びます。
「せっかくなら、今から間に合う限り思いっきりやってしまおうと(笑)。当初のプランでは2階が会議室で、4階以上はすべて執務フロアの予定でした。しかし、『社内外のコラボレーションを促すオフィス』という新コンセプトが固まったことで、さまざまな場所で“出会い”と“ゆらぎ”が生まれる仕組みを導入することにしました。エントランスがある2階には、『外部の人々との接点が生まれる場所』としてコワーキングスペースを設け、会議室は3階へ移動。4階、5階に各種スタジオをつくることで、『アーティストやレッスン生との接点』が、6階以上の執務フロアはフリーアドレス制にすることで、『社員の混ざり合い』が生まれるようにしました。17階の社員食堂もコンセプトを見直し、開放感のあるデザインに。全フロアを通して、社内の流動性を高め、かつ、外に向けても開かれたオフィスにしたのです」(加藤)

社内スタジオ=新しい才能との出会いの場。

こうした設計プランの大幅な変更の中でも、特にその是非をめぐって議論になったのは、4階、5階に設置するレッスンスタジオとレコーディングスタジオでした。村山が言います。
「どちらも当初の予定にはなかったものです。スクールもスタジオもすでに社外に持っていたので、本当に社内につくる必要があるのか、かなり議論をしました」
 新たにスタジオを併設するとなれば当然、追加のコストがかかります。しかし、「それでも社内にあったほうがプラスになると判断した」と加藤は言います。
「社内にレコーディングスタジオがあることで、マネジメントやA&R(※1)の社員とアーティストとの物理的な距離が縮まり、打ち合わせもしやすくなります。レッスンスタジオには、エイベックス・アーティストアカデミー(※2)とエイベックス・ダンスマスター(※3)から選抜された育成生に来てもらいます。社員が選抜メンバーのレッスンの様子をいつでも見て、話しかけられるようになることで、新しい才能とのコラボレーションが生まれる可能性が広がると考えたのです。全国の育成生がここでレッスンを受けられることを目指すような、憧れの場所になればいいなと思っています」
エイベックスにとって重要なアーティストとの接点をオフィス内にもつくることで、次なるヒットの芽を積極的に探っていく。本社ビルへのスタジオ設置には、そんな意図が込められています。

村山 智之

  「目指すビジョンがはっきりしていたので、こうした設計プラン自体は1ヵ月ほどで一気に固まりました。それをどう具体化していくかは、パートナー企業の方々とディスカッションしながら進めていきました」(加藤)
※1_A&R:アーティスト アンド レパートリー(Artists & Repertoire)の略。アーティストの発掘・契約・育成から、楽曲の企画・制作に至るまで、制作業務全般を担当する職種。
※2_エイベックス・アーティストアカデミー:次世代アーティストや音楽クリエイターの発掘・育成を目的に2001年に設立された、エイベックスが運営するスクール事業。
※3_エイベックス・ダンスマスター:日本ストリートダンス協会(JSDA)公認の、エイベックスのダンスプログラムを導入しているダンススクール。

部署も役職も超えて社員が混ざり合う。

執務フロアを担当した岡村製作所は、他社のフリーアドレス設計の実績もあり、エイベックスが目指すコンセプトを実現するために相応しいパートナーでした。それに加えて、新社屋プロジェクトの体制図を見ても分かるように、新たな設計プランには、多くのパートナー企業が関わっています。
「イノベーティヴなオフィスを目指すとはいえ、単なる海外事例のコピーのようなオフィスにはしたくありませんでした。良い事例は参考にしつつも、『コラボレーションが起き』、『働きがいがあり』、かつ、『エンタテインメント企業らしい』というコンセプトを体現したオフィスを、青山という場所で実現してくれるパートナーはどこか。検討を重ねた結果、執務フロア以外は、“コミュニケーションが生まれる場”をつくった実績が豊富、かつ、エイベックスとビジネス実績もあり、そして業界に対する理解もあって、我々が考える“エイベックスらしさ”を再現した提案をしてくださったトランジットジェネラルオフィスと全面的にタッグを組むことにしました」(加藤)
同社が提案したパートナーの協力も得て、エイベックスの革新的なオフィスビルは、計画変更から1年足らずで完成したのです。

打ち合わせなどを想定した入口側のエリア

作業に集中しやすい集中ゾーン

 その中心になるのは、やはり社員が日々業務をする執務フロアです。6階~9階、12階~15階は「基準階」として、フリーアドレスのデスク構成になっています。最大の特徴は、オフィス内を横断するように設置された、リボンのような流線型の長い執務デスク。このデスクを中心に、ミーティングスペースや、集中して作業ができるスペース等がフロア内の各所に散らばっています。
「流線型のデスクは、偶然に隣り合った人との意外なつながりが生まれるようにと導入しました。他社の事例にもあまりない、今回の新社屋の象徴ともいえるものになったと思います」(加藤)
 社員は出社したら、まず各フロアのロッカーから自分の荷物を取り、好きな席で仕事をします。しかし、「好きな場所に座っていい」と言われても、気が付けば同じ席にばかり座る人が出てしまうもの。これをいかに避けるかが、フリーアドレスを運用するポイントになります。
「そこで、全体レイアウトはある程度統一しつつも、フロアごとにデザインを変えました。そうすることで、気分転換を兼ねてほかの階にも行ってみようという気になってほしいと思っています。部署も役職も超えて社員が混ざり合うことが大切なのです」(加藤)

働いていることが誇らしい
オフィスになった。

さらに、新社屋ではIoTの活用も段階的に進めています。たとえば、執務フロアの入り口には、試験的にNECの「顔認証システム」を取り入れ、IDカードがなくても入室できるようになっています。村山がこう説明します。
「開かれたオフィスであっても、セキュリティ対策は不可欠です。一見トレードオフに見えるこの課題の解決策として、IDカード認証よりも高いセキュリティが保てる顔認証システムを試験導入することにしました。将来的には、蓄積された顔認証のデータを人工知能と組み合わせて、表情の変化から社員の健康管理等もできるようしていきたいですね」
 こうしたIoTはビル内のさまざまな箇所で導入していく予定です。
「たとえば、ミーティングスペースに人感センサーを導入して、使いたいときにすぐに使えるところを確認できるようにしたり、社内LANに接続しているiPhoneの位置から社員の居場所を確認できるようにしたり。IoTを活用することで、『誰がどこにいるのか分からない』というフリーアドレスのデメリットを埋めていくことができるのです」(村山)
エイベックスはエンタテインメント業界にイノベーションを起こすために、テクノロジーを積極的に活用していくことをビジョンとして掲げています。これらIoTの導入は、働き方の変化に対応するためだけでなく、最新のテクノロジーによってビジネスがどう変わるかを、社員に実感してもらう意義もあります。
「松浦社長も言っているように、エイベックスのオフィスはこれが完成形ではありません。IoTの発展や働き方の変化に応じて、オフィスをより良いものに育てていくことが重要だと考えています。」(村山)

座る位置で気分も目線も変わるメインフロア

 2016年5月にエイベックスの新たな成長戦略が発表されてから1年半。「第三創業」と位置づけられた今後の数年間で会社が目指すビジョンが、ついに新社屋として具体化されました。「エイベックスの社員であることが誇らしくなるようなオフィスになったはず」と加藤は手応えを語ります。
「エントランスから社員食堂にいたるまで、外部の人を連れてきたら、絶対に『羨ましい』と言っていただけるものになったはずです。松浦社長は『新社屋を人が対流する場にしたい』と言っていました。イノベーションは人が生み出すものであり、そのためには社内外の才能のコラボレーションが欠かせません。新社屋はオフィスというよりも、さまざまな才能が集まるコミュニティになるのが理想です。そこから私たちの想像も超えるようなものが生まれてほしいと思っています」

執務フロア3Dパース

メインデスクは、エイベックスの新しいブランドロゴからインスピレーションを受け、“リボン”“メビウスの輪”をキーワードに設計された。両端がそれぞれ上階/下階へと伸びており、6階〜15階の10フロアが1本のリボンでつながるようなデザインになっている。
フロアはメインデスクによってゆるやかにゾーニングされている。入り口側のエリアは他部署の人とさっと集まって打ち合わせを行うことを想定し、丸テーブル等を設置。一方、壁側のエリアは作業に集中しやすい空間になっており、一人用のブースもある。

新しいブランドロゴからインスピレーションを受けた流線型のメインデスク

加藤信介 shinsuke kato エイベックス株式会社 グループ執行役員 
グループ戦略室長

1981年生まれ。2004年に現・エイベックス株式会社入社。営業、販売促進、マネジメントを経て、16年より社長室部長として構造改革や新規プロジェクトに参画。17年4月よりグループ執行役員グループ戦略室長。戦略人事、グループ広報、マーケティングアナリティクス/デジタルR&Dを担当。

村山智之 tomoyuki murayamaエイベックス株式会社グループ管理本部
総務グループ ゼネラルマネージャー

1968年生まれ。97年に現・エイベックス株式会社入社。現在はグループ管理本部総務グループゼネラルマネージャーとして本社ビルプロジェクトを担当する。